ひとつポイントとして先にお伝えしておきたいのですが、
太陽光パネルで発電した電力を自家消費で利用できる割合は、平均で35%程度と言われています。
つまり、蓄電池を設置しない場合は、
残りの65%はかならず売電することになります。
現在の買取制度では、
発電分のすべてを自家消費した上で余剰分があった場合のみでしか売電出来ないので、
”売電単価が下がった=設置しない”には全く繋がらないのです。
こちらをポイントとしておさえていただき、ここからのお話を進めます!
■今回の記事のポイント■
①太陽光発電の普及に合わせて、
設置コストとのバランス調整等の理由で年々売電単価は下がり続ける
②住宅用の太陽光(10kWh未満)は2025年度の売電単価が15円
③卒FIT対象者(太陽光発電を設置して10年経過した方)の売電単価は7円~8円前後
④売電単価が下がっても太陽光発電は、
「電力会社からの高い電気代を買わない防御策」「停電対策」として有効的
太陽光発電の普及につれて設置費用は安くなっている
なぜ売電単価が下がっているのか?の結論となりますが、
売電単価は太陽光発電の設置金額を目安に算出されています。
太陽光発電の設置金額は普及が進み市場が拡大するにつれて、
各社の競争によって年々安くなってきています。
そして、その金額に合わせるように売電単価も設定されています。
売電単価は実質的に調達価格等算定委員会が決める
売電単価は経済産業省内にある「固定価格等算定委員会」という部署が、
様々な状況を鑑みて委員長案として提出し経済産業省で決定されます。
FIT制度(固定価格買取制度)が始まる2009年以前は、
太陽光発電の余剰電力は24円という単価での買取でしたが、
2009年のFIT制度開始で48円の買取に一気に値上げされ、
太陽光発電の普及が本格的に始まりました。
2009年当時、FIT制度は10年で終了し
10年後の2019年に買取価格を24円に戻す前提で制度がスタートしています。
そのため、2019年まではある程度、次年度の単価が予測が簡単でした。
2020年以降も固定価格等算定委員会が様々な状況を鑑みて検討・決定しますが、
将来的な目標価格等は現在ありません。
売電単価を決定する際に考慮されるものとして以下が挙げられます。
- 太陽光発電(1,000kW以上)の設備金額の平均値を目標値
- 環境省や国交省などの各省庁からの意見 など
※太陽光発電の売電価格に関して議論する「調達価格等算定委員会(第21回)」の資料によると、
売電価格は”効率的に事業を実施した案件の水準を採用するため、
最新期の1,000kW以上のシステム費用(設置費用)の中央値を採用し、
翌年度の買取価格(売電価格)を決定、とあります
これらを委員会内で検討し、委員長案として経済産業省へ提出されます。
最終的には経済産業大臣が決定しますが、
この委員長案が過去に大臣によって覆されたことはなくそのまま採用されますので、
実質的には固定価格等算定委員会が決定しているような形になっています。
そして、設置金額は年々下落しているため、
それに合わせるように住宅用も産業用も売電単価が下落してきました。
2025年度の売電単価は住宅用:15円(前年度から1円のマイナス) / 産業用:9.5~10円(前年度据え置き)
次に、今から太陽光発電の設置を検討している方にとって1番気になるポイント、
実際のの売電単価について解説していきます。
まずは2025年度(令和7年度)の売電単価の一覧表です。
なお2020年度から、10kWh以上の産業用太陽光の場合、FIT制度における売電単価の仕組みが変わりました。
これまでは10kWh以上の「全量買取」が適用されている案件に関しては、発電した電気のすべてを売電できました。 しかし2020年度以降の設備認定案件に関しては、設置容量が10kWh以上~50kWh未満の場合「余剰買取」が適用されます。
太陽光発電で発電した電力を「自家消費として30%以上を充当」することが条件となり、余剰発電分を電力会社に売電します。
10kWh未満の売電単価も遂に10円台に突入しましたが、これは裏を返せば太陽光発電業界は成長期から成熟期に入ったと言えるでしょう。
売電単価の過去の推移
経済産業省からは毎年3月下旬頃、次年度の売電単価が発表されるようになっています。
こちらの表が過去の売電単価の推移一覧です。10kW未満の住宅用太陽光発電の場合、この売電権利が終了するのは売電開始から10年後です。
※設置金額の目安は、住宅用として5kWh以上設置する場合の市場想定価格
住宅用太陽光発電の売電価格は、
2025年までに卸電力市場価格並みの11円/kWhとする価格目標が掲げられていましたが、
2025年度の売電価格は2024年度から1円下がって15円となります。
2025年現在、FIT制度が開始した当初に太陽光発電を設置された方は、
10年が経過し権利が順次終了、新しい契約に移行しています。
FIT制度の売電期間終了後は売電単価が大幅に下がる
つづいて、太陽光発電を設置して10年経過し売電期間が終了した場合、
それまでの高額な売電単価はどうなるのか?を解説します。
売電期間10年が経過しFIT制度が終了すると大幅に売電単価は下がります。
これを「卒FIT」と呼んだりします。
なぜ今までそんな高額な単価で買い取ってもらえていたのか?
理由は「再生可能エネルギー賦課金(以下 再エネ賦課金)」です。
再生可能エネルギーの普及を後押しするために、
太陽光発電の導入コストがまだまだ高額だった頃は、
売電金額を再エネ賦課金で賄い高くすることで普及を後押ししてきました。
ただ、それは10年という期限つきです。
電気を買い取る側の電力会社としては「安く買い取って高く売らないといけない」わけです。
そのためFIT終了後は、
再エネ賦課金の恩恵がなくなった「裸の買取価格(売電単価)」になってしまいます。
「卒FIT」向けの各大手電力会社のプランを、こちらの表に一覧でまとめています。

2016年に電力自由化が始まり、
新規参入した電力会社(新電力・地域の電力会社)もあるため、
大手電力会社と必ず契約しないといけないわけではないので、
どの電力会社と売電契約するかは自由に選択することができます。
しかし上記の大手電力会社以外で余剰電力を買取をしてくれる企業も、
近似の単価になっています。
今まで48円や42円で売電されていた方の多くは、
設置費用の元は取れていると思いますが、
それでも6分の1 ~ 5分の1の程度の売電価格になってしまうのは衝撃でしょう。
今後も売電単価の下落は続く
それでは、今後の見通しについて少し紹介していきたいと思いますが、
結論としては今後も売電単価は下がり続けると考えられます。
太陽光発電自体が飽和状態の地域もある
太陽光発電も全国の中では、
既に飽和状態になっている地域もあります。
それが特に顕著な地域は、九州地方と言われています。
FIT制度では、
太陽光発電が発電した電気は電力会社が買い取ってくれますが、
現実的には九州で発電した電気を北海道で消費することはできません。
(契約上、北海道の方が九州電力と契約することができますが、
実際に使っている電気自体は周辺で作られた電気です)
そのため、
九州地方で大規模産業用太陽光発電が乱立している地域では、
発電過剰になり「電気の渋滞」=「出力抑制」という現象が起きることがあります。
電力会社は、電気の需要と供給のバランスを取っています。
地域で使う電気の需要量に対して、
発電する供給量が大幅に上回り、
需給バランスが崩れてしまうと、
大規模停電に繋がる恐れまであります。
そのため、
電力会社から「太陽光発電そんなに発電しなくていいです」という信号を送って、
太陽光発電のシステム側で抑制をかける仕組みが「出力抑制」です。
このように、
電力会社から「そんなに発電しても使いきれない」という状態になることがあるように、
太陽光発電自体が飽和状態になっていることもあり、
地域によっては特に産業用太陽光は急ピッチに増やす必要性は減ってきています。
そのため、売電単価は今後も下がり続けていくでしょう。
それでも太陽光発電の売電収入は一般家庭で約5,122円(2024年単価)
確かに売電単価は下落しており、
産業用太陽光は特に魅力がだんだん無くなっていくように思えてしまいます。
ただし住宅用太陽光を冷静に分析してみましょう。
2024年の売電単価で、
実際どれくらい毎月の収入になるか?を見ていきましょう。
こちらは、
パナソニックのサイトで計算をした大阪で5kWhの太陽光発電を設置したときの
平均的なシミュレーションデータです。

(出典:パナソニック「エネピタ試算結果」)
年間の予測発電量が6,547kWhとなっています。
発電した電気は、概ね平均的なご家庭では、
約35%が自家消費、約65%が売電に回ると言われています。
6,547Wh×65%=4,256kWh(年間の売電量 *想定)
4,256kWh × 16円(2024年売電単価)=68,089円(年間)となり、
月平均では約5,674円の売電収入になります。
単純には10年間で約68万円の収入となりますので、
意外と16円という単価でも一般家庭からすれば有難い収入ではないでしょうか。
売電単価が下がっても太陽光発電を付けてトクと言える4つの理由
1と2の章では、
太陽光発電の売電単価は今後も下がりつけていく、という解説をしましたが、
そうするとこれから太陽光発電を設置する意味は減っていくんじゃないの?
と思う方も多いのではないでしょうか。
売電単価が下がり続けていても、実は太陽光発電の設置量は上がり続けています。

(出典:株式会社資源総合システム「日本市場における2030年に向けた太陽光発電導入量予測(2018~19年版)を発行しました。」)
当然ながら、損であるなら設置はしませんよね。
それでは売電単価が下がっても、
太陽光発電を設置してトクと言える4つの理由を紹介します。
電力会社からの買電価格が値上がり続けている
まず一番大きなポイントが「電力会社からの買電量を減らすことができる」ことです。
東日本大震災や中東情勢、様々な要因で電気代は値上がりを続けており、
今後も値上がり雨を続ける予測が概ね大半の予想です。
太陽光発電を設置していると、
発電している最中に自宅で使っている電気(冷蔵庫やテレビなどで使っている電気)は、
優先的に太陽光発電で作られた電気が消費されています。
余った電気が売電される仕組みになっているため、
売電単価が一昔前に比べて安くなりつつあるとは言え、
自家消費する分に関しては売電単価は関係ありません。
そのため、
本来深夜電力を使ってお湯を沸かすエコキュートすらも、
太陽光発電で発電した電気でお湯を沸かした方がトクとなっています。
こういった形で、
値上げされてくる電気代に対して電力会社から買う電気量を極力減らして
自給自足の割合を増やすことによる自己防衛策として、
太陽光発電は有効、というワケです。
再エネ賦課金の値上げ
上記の解説で触れた「電気代の値上げ」ですが、
その一旦となっている「再エネ賦課金の値上げ」です。
再エネ賦課金は2012年に導入されてから、
2025年時点では約15倍の値上がり率となっており、
異常な程値上げを続けていました。
当時は平均的な一般家庭で、
約1,500円/月(ガス併用住宅)~2,000円/月(オール電化)程度の上乗せが
再エネ賦課金として請求されています。
実はこれも太陽光発電の設置によって減らすことができます。
再エネ賦課金の請求額は、
「電力会社からの買電量」×「その年の単価」になります。
太陽光発電の自家消費により約35%削減できたとすると、
525円~700円/月程度の節約につながります。
微々たる金額かも知れませんが毎月請求されることと、
これが今後も値上がり続けることを考えると
意外と無視できない金額になってくるのではないでしょうか。
※2023年度は電気代の値上げを考慮して1.4円に引き下げられていましたが、2024年度は3.49円と引き上げられる結果となりました。
蓄電池を設置する場合に相乗効果を生み出す
蓄電池を併用すると、この自家消費の比率を高めることができます。
太陽光発電のデメリットは
「晴れている(曇っている)昼間しか発電しない」ということです。
蓄電池があれば昼間自家消費して余った電気を、
「安い単価で売ってしまうのであれば、自分で貯めて、高い単価の電気を買わずに消費する」
ということができます。
もちろん災害用として使うこともできますが、
年に何回あるかわからない停電のためにずっと満タンにしておくのは勿体ないので、
普段の使い方としては太陽光発電の余剰電力を貯めて、
夜間に使うことで「より電力会社からの買電量を減らす」ことができ、節約につながります。
災害・停電対策として有効
最後に、太陽光発電だけでも停電対策として有効な手段です。
大規模な災害の際に、停電が数日~1週間程度に渡って続くときがあります。
そんな時に昼間だけでも電気を使うことができれば、
最低限の生活は送ることができます。
また蓄電池があれば尚良いことは間違いありませんが、
太陽光発電の電気だけでも最大100V・1500Wの電気を使うことができますので、
冷蔵庫を動かしたりテレビを見る、スマートフォンを充電するぐらいのことは十分できます。
まとめ
■今回の記事のポイント■
①太陽光発電の普及に合わせて、
設置コストとのバランス調整等の理由で年々売電単価は下がり続ける
②住宅用の太陽光(10kWh未満)は2025年度の売電単価が15円
③卒FIT対象者(太陽光発電を設置して10年経過した方)の売電単価は7円~8円前後
④売電単価が下がっても太陽光発電は、
「電力会社からの高い電気代を買わない防御策」「停電対策」として有効的
今回の記事では、
売電単価は太陽光発電の設備コスト下落等の理由で年々売電単価が下がっていく、
という結論のもと派生して様々な解説を行いました。
確かに売電単価が下がって、
10kWh以上の大規模な太陽光発電は魅力が薄れている一方、
売電単価が下がっても太陽光発電のシステム自体が増え続ける理由を冷静に考察していくと、
住宅用の太陽光発電はまだまだ設置する意味が大きいと言えます。